プリンシパルロールに聞く「セレナーデ」
「セレナーデ」に登場する3人の女性プリンシパル。この3人には、ワルツガール(Waltz girl)、ロシアンガール(Russian girl)、エンジェル(Angel)という、表だっては公表されていない呼び名がついています。
今回は、ロシアンガールを踊る金子紗也(3月25日)、エンジェルを踊る久保田小百合(25日)と喜入依里(26日)に、それぞれの演じる役どころや「セレナーデ」の難しさについて話を聞きました。
「セレナーデ」への出演は、久保田さんと金子さんは2008年に続き今回が2回目、昨年SDBに入団した喜入さんは今回が初めてとなります。
久保田 2008年の公演ではコールドとエンジェルをダブルで踊らせていただきました。エンジェルは入団して初めていただいた大きな役で、当時は言われたことをこなすことに精一杯でした。振り返ると、作品のことを理解する、というところまで行けていなかったな、と思います。もし再演することがあれば、もう一度挑戦したいと思っていました。
金子 2008年に入団して、初めての本公演で踊ったのが「セレナーデ」でした。バランシン作品も初めてで、とにかくついていくのに必死だった記憶があります。そのときは、まさか自分がこの役を踊る時が来るとは夢にも思っていませんでした。これまでいろいろな役を踊らせていただいた中で、いちばんチャレンジングな役です。
喜入 私は「セレナーデ」は初めて、というかバランシン作品自体を踊るのが初めてなんです。バランシン作品、中でも特に「セレナーデ」は以前から踊りたいと思っていて、それがSDBに入団したいと思った理由でもあります。
ロシアンガールとエンジェルはどのような役どころなのでしょう?
久保田 「セレナーデ」はストーリーのないバレエと言われていますが、エンジェルとそのパートナーの男性ダンサーの間には、なんとなく物語が見えるような気がしています。ベンさんは、エンジェルは「(天使の)翼」だと言っていて、振付にも翼を思わせるようなポール・ド・ブラ(腕の動き)があります。私自身は、エンジェルは男性の翼なのだと解釈していて、男性との関係性を意識しながら踊っています。
金子 ロシアンガールは、ジャンプや回転など、テクニックを魅せる場面が多くあるのが特徴です。ジャンプが多いことから、ジャンピングガールと言われることもありますね。それから、これは諸説あるようなのですが、セレナーデの3人のプリンシパルには、愛人や妻といった裏の役名があるともいわれてます。それを思わせるような振付もあるので、注目してみるとおもしろいと思います。
「セレナーデ」の難しさはどういうところでしょうか?
喜入 圧倒的なパワーが必要なところですね。ちょっとした表現でごまかしがきくような振付ではないので、強靭な身体を作っておかないと踊りこなせないと実感しています。
久保田 コールドも難しいです。「セレナーデ」はコールドが主役といわれるくらいで、例えば「ジゼル」のコールドと比べても、ムーブメントが全く違うんです。
ベンさんのリハーサルはいかがですか?
喜入 ダンサーとして当たり前に出来なければならない基本的なことでも、ベンさんは根気強く言ってくださるので、それはベンさんとのリハーサルが終わった後も自分自身で言い聞かせて、続けていかないといけないなと思っています。ダンサーとはこうあるべき、というのを改めて思い知らされます。
久保田 リハーサルの間だけ気をつけていればできる、ということではないんですよね。バーレッスンやセンターのときから考えてやらないと、リハーサルでいきなりはできない。結局は、自分に厳しく毎日の稽古を続けることが大事なのだと痛感します。「何か表現したいもの」を自分の中で持っていることが重要なのだと前回教わったので、今回はそこも注意して取り組んでいます。
金子 ベンさんに言われるようなことが普段から毎日できていればリハーサルでこんな苦労しないんだろうな、と思ったりもします(笑)でも、定期的にバランシン作品を踊ることができる環境にいられることは、本当に恵まれていると思います。
バランシン作品で特に好きな作品はありますか?
金子 観るのは「セレナーデ」が好きですね。踊ってみたかったのは、「ウェスタン・シンフォニー」の第4楽章です。2012年の公演で踊らせていただいたのですが、最初に歩く4歩だけで止められて、「色気が足りない」と何度も言われました。このときは自分の至らなさを感じましたね。他の作品でも色気のある役をやらせていただくことが多いのですが、この「ウェスタン」の経験が生かされていると思います。
久保田 バランシン作品のどれか、というよりは、バランシン作品全般に通じる動きが好きです。ベンさんの指す「正解」は、ある意味明確なんです。バランシンのスタイルはこう、というのがはっきりしています。それをつかむことができると、ぴたりと型にはまる感覚でとても気持ちいいです。そこに至るまでが難しいのですが。
喜入 私はやっぱり「セレナーデ」ですね。あまりバランシン作品を知らないというのもあるのですが、いつか踊りたいと思っていた作品です。
見せ場を挙げるとしたら?
久保田 エンジェルは、やはりあのアラベスクのシーンは見せ場だと思います。
喜入 印象的で、誰もが期待してしまうシーンだと思います。
金子 ロシアンガールは、ジャンプや回転などテクニック的なところですね。実はジャンプは得意ではないのですが、理想のイメージに近づくように仕上げていきたいです。それから、「エレジー」(※)のシーンは、音楽と空気感と動きのすべてがマッチする本当に美しいシーンです。
※「セレナーデ」は「ソナチネ」、「ワルツ」、「ロシアンダンス」、「エレジー」と4楽章で構成される。
途中から髪を下ろして踊るシーンもありますね。
久保田 第3楽章のロシアン・ダンスの最後で、ワルツガールが髪をほどくシーンがあります。バランシンは“Ballet is woman.”(バレエとは女性である)といったくらいで、女性に対する理想像としてダウンヘアがあったのかもしれません。
金子 最後の「エレジー」ではプリンシパルの3人が髪をおろして踊るのですが、毎回必ずというわけではないんです。初演の時と、前回はアップヘアのままでした。今回はまだ決まってないですが。スカートと髪をなびかせる感じが音楽とマッチするとすごくきれいだし、踊っていても気持ちよさそうだなと。
喜入 今日のリハーサルはお団子でしたが、「髪を感じて」という指示もあったので期待してもいいかもしれませんね。
3月公演では、ダウンヘアで踊る3人が見られるかもしれませんね。ありがとうございました!
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