SDBロゴ

「くるみ割り人形」キャストインタビュー【秋山和沙&林田翔平】

今回初めてクララを演じる秋山和沙と、2年ぶりの王子役を務める林田翔平。初めてパートナーを組むというふたりに、役作りのことや意気込みなどを聞いてみました。


— 秋山さんは初主役に抜擢されましたね。

 

秋山 稔先生(編集注:常任振付家 鈴木稔)から「やる?」とお話があったときは、頭がまっしろになりました。でも不安よりも嬉しさの方が大きかったです。

 

— クララをやってみたいという思いはあったのですか?

 

秋山 やりたいという気持ちはあったのですが、まさか本当にできるとは思っていませんでした。鈴木稔版「くるみ割り人形」には入団した年から毎年出演していて、先輩方の踊るクララ役はずっと憧れで・・・だからすごく嬉しかったです。

 

— 林田さんは、2017年に王子役をすでに経験していますが、昨年は怪我による降板という残念な結果になってしまいました。今回はリベンジとなりますね。

 

林田 去年の降板は本当に悔しかったです。怪我をしたのが本番1週間前で、練習もそうですが、主役同士だけではなく、周りのキャストのみんなとも細かいところまで話し合って創り上げていたものが一気にパーになってしまって。今度は怪我をしないよう、これまで以上に気を付けてやるしかないです!

 

— 今回ふたりがパートナーとして組むのは初めてですか?

 

林田 そうですね。今回王子をやると決まったときは、まだ誰と踊るか聞かされていなくて、誰とやるのかなーと思っていたら和沙ちゃんで。学校公演などで少しだけ一緒に踊ることはありましたが、このようにがっつり組むのは初めてです。

 

— 秋山さんから見て、林田さんはどんなパートナーですか?

 

秋山 翔平さんはクールな印象があったので、うまくコミュニケーションが取れるか最初は正直不安でした(笑)でもリハーサルが始まったら全然そんなことはなくて、私の話も聞いてくれますし、すごく優しい頼れるパートナーです。

 

 

— リハーサルは現在パ・ド・ドゥがメインのようですが、演技面についてはまだこれからという感じでしょうか。

 

林田 そうですね。でも、演技というか、「ここはこういう感情だからこういう間合いでいこう」とか、ちょっとしたタイミングの取り方についてはふたりで少しずつ話し合ったりしています。

 

秋山 私は演技があまり得意ではなくて・・・。最初にクララをやるとお話をいただいたときに、私の場合はテクニックより表現の仕方を重点的にやらなきゃいけないとも言われていたので、覚悟して臨んでいます。

 

— 秋山さんは演技が苦手といいますが、去年の「くるみ割り人形」で踊った大道芸人は、初役ながらとても自然に演じられているように見えました。

 

秋山 大道芸人は、割と素なんです。バレエ団のみんなからも、私そのままだと言っていただけて。振付に関しても、得意なものを詰め込んでいただいたので、心配なところが全くなく、とても楽しく踊れました。大好きな役で、今年も踊らせてもらえるかなと思っていました(笑)

 

 

— ではちょっと残念(?)でしたね(笑)
クララの役作りについては、何か考えていることはありますか?

 

秋山 クララと自分の共通点を考えてみたのですが、あんまり似ているところがないんです。でも、子どもの頃はプレゼントをもらったら嬉しくなったし、雪が降っていたら外に遊びにいきたくなったし、自分にもクララみたいな時期は確かにあったんだということを思い出して。無理に作り込まずに、自分に寄せて自然に演じられたらと思っています。

 

— クララを踊ると決まって、図書館に勉強にいったという噂をききましたが本当ですか?

 

秋山 はい、行きました(笑)改めて、「くるみ割り人形」には様々な版があるんだなということが確認できておもしろかったです。あとは他のバージョンのDVDを見て、吸収できるところがないか探したりもしています。

 

— 林田さんは、役作りについてはどのように取り組んでいますか?

 

林田 下準備はもちろんするのですが、練習段階で「ここはこうしよう」と決めてしまうことはなく、最後の部分はその場の気持ちにまかせるようにしています。「こう思うんだろうな」という体で練習はしているのですが、本番の舞台に立ってみたら違う感情になるかもしれないので。でも初めて王子を踊らせていただいたときは緊張ばかりしていて、実はあんまり覚えていないんです。

 

— そのときは入団して間もなくの主役抜擢でしたね。でもそれからバレエ「ドラゴンクエスト」など様々な作品で主要な役を演じてきて、表現の幅が広がったのではないでしょうか?

 

林田 色々な役をやらせていただいて、引き出しは増えたように思います。手を出すとか、目をやるとか、基本的なところから始まりましたが、色んな人の演技をみながら、指導をうけながら、自分なりの解釈や伝え方を蓄積することができたので、2年前と比べれば、「ここをこうしたらよいかも」というアイディアは増えました。
僕自身が踊りで見せるタイプというわけではないので、踊りはもちろん頑張りますが、僕の表現していることがひとりでも多くの方に伝わればいいなと思っています。

 

 

— 「くるみ割り人形」の主役を演じる上で、難しさを感じていることはありますか?

 

秋山 パ・ド・ドゥにおいても、主役らしさというか、ひとつひとつのステップや挙動についてもっと風格を持たせなければならないと、今まであまり受けたことのない注意をされるので、すごく苦労しています。振付も難しいのですが、それ以上に一貫してクララとして踊ることが難しい。疲れてくると素に戻ってしまったりするので、気を付けています。

 

林田 僕は何をやっても王子でいなければいけないことでしょうか。やんちゃになりたいときも、それをぐっとこらえながらやっていて・・・。僕だけかもしれないですが。自由に見えて自由ではない瞬間があって、そこが難しいと思っています。

 

— やんちゃになりたいとは、具体的にどういう感じですか?

 

林田 「やんちゃ」というと語弊があるかもしれないのですが、きれいに演じているだけではなく、そこに自分の色味を足したい瞬間があるんですよね。でもそれをやると王子ではなくなってしまう。「ドラクエ」の白の勇者や「ウェスタン・シンフォニー」の第1楽章は爆発できますが、王子はできない。本当は第1楽章くらいのキャラをずっとやれたらと思ったりします(笑)

 

 

— なるほど。その話はまた改めて聞きたいと思います(笑)
「くるみ割り人形」に話を戻して、好きなシーンやキャラクターを教えてください。

 

秋山 1幕のクリスマスマーケットのシーンは無条件に楽しくて大好きです。物語につながるいろんな伏線が張られているので本当にどこも見逃せないんです。お酒を飲んで楽しくなってしまっている酔っ払いのお父さんたちもおもしろいので注目してほしいです。
あとはクララと王子が出会うパ・ド・ドゥ。感動的な音楽と素敵な振付でキュンキュンしてしまいます。

 

 

林田 僕は毎年言っている気がしますが(笑)、雪のシーンが一番好きです。自分は踊っていないのですが、稔さんの良い意味での破天荒さというか、「そこまでやっちゃう?」みたいなところが好きで。僕らに対しては、主役っていうのもあって、たぶん稔さんはちょっとセーブしながらやっているんですが、雪の場合はそこまで突っ込むんだ、いいなあ、と。毎年あそこに混ざりたいと思いながら見ています。
キャラクターとしては、個人的には3連人形がすごく好きです。あとはドロッセルマイヤー。あきさん(注:鴻巣明史)が演じるドロッセルマイヤーが好きなんです。

 

 

— 最後に意気込みを聞かせていただけますか。

 

林田 幕が閉じた後に、「楽しかった」と言っていただけるのはとても嬉しいのですが、その一段階上の「もう1回観たいね」と言っていただけるところを目指したいです。去年の分も頑張るので、ぜひ観に来てください。

 

秋山 鈴木稔版「くるみ割り人形」では、幕が上がってから降りるまでの間にどのようにクララが成長するのか、というところが見どころのひとつで、そこに注目していただきたいと思います。私もクララの成長をしっかりと見せられるように頑張りたいです。

 

— ありがとうございました!

 


「くるみ割り人形」公演情報はこちらから

舞台写真:長谷川清徳

前に戻るBack
戻る