SDBロゴ

【ジゼル】総監督小山久美INTERVIEW

ピーター・ライト版「ジゼル」のSDB初演は1989年。大切なレパートリーとして上演を重ねてきました。
初演時に主役を演じ、幾度となくジゼルを踊ってきた総監督 小山久美から当時の貴重なエピソードを聞きました!


 

 
ー バレエ団で初めて取り組んだピーター・ライト作品ですね。「ジゼル」を上演することになった経緯を教えてください。

ピーター・ライト版の「ジゼル」は現代にも通じるような演出です。主人公ジゼルが自殺してしまう、だから2幕に登場するジゼルのお墓は人目に付かないような場所にある。きちんと辻褄が合っていて、筋が通っている。当時、太刀川先生(SDB創設者)はその演出に惹かれ、「このジゼルをやりたい。このジゼルがいい。」と強く思ったことがきっかけだと聞いています。

それまでは、ピーター・ライトさん(以下ピーター)とバレエ団につながりもなかったので、日本のバレエ団からの突然の連絡にピーターは驚いたのではないかな、と思います。

古典作品を海外から指導者を呼んで上演するのもこの「ジゼル」が初めてでした。

 

ー「ジゼル」からピーターさんとの関係が始まったのですね。初演時に主役を演じられましたが、リハーサルで印象に残っていることなどありますか?

指導者のデニス・ボナー(以下デニス)さんが来日されてからリハーサルが始まったのですが、たしか1か月ほどしかなかったように思います。最初は説明を受けて、習った通り、言われた通りという風にやっていた記憶があります。ここでこうする、ここでこう見る、とか音楽に対してもすべて決まっていて。非常に細かかったのですが、どの役に対しても指示がとても明確だったので、すべてその通りにやることで、自然と物語が生まれていきました。

ピーターがやってみせてくださる芝居がどれも素晴らしかったことも忘れられないですね。

初演時は美術・衣裳のピーター・ファーマーさんも来日され、最後の筆入れや仕上げなどをご自身でしてくださったとあとから聞き、すごいことだなと思いました。

 

 
ー 主役を演じることが決定したときはどう思いましたか?

主役を演じることは嬉しかったのですが、嬉しいというよりも必死でした。他のことを考えられなくなるくらいその時期はジゼルに集中していて、ずっと考えていましたね・・・
実はジゼル初演公演の10日後が結婚式で、何も準備していなかったので大慌てでした(笑)
 

ー これまでに何度もジゼルを演じられてきましたが、特に思い出に残っている公演はありますか?

芝居につられて自分の感情が高まることもあったのですが、自分の中でやり切った感があったときには褒められず、「今日は淡々とやったな」「いまひとつ出し切ってないかも?」と思ったときに褒められることが多かったんです。試行錯誤しながら続けていって、回数を重ねることでだんだんと見えてくるものがあって。「やみくもに頑張るのではなく、でも集中して演じるということはこういうことだな・・」と思ったのは、1999年の公演。自分でもそれなりに掴んだ感覚があり、周りから良かったという声も多くいただきました。自分の感情の高ぶりがそのまま舞台全体の高ぶりになるわけではなく、やはり外側のお客さまからどう見えるか、ということだと思います。

ジゼルは特に、何度演じても、本番前は毎回逃げ出したくなっていました。でも扉を開けてしまえば、迷わず進むことができる。それはピーターの力なのだと思います。

 

 

ー 総監督にとって、「ジゼル」はどんな作品ですか?

自信を持たせてくれた作品であり、それまで知らなかった自分を目覚めさせてくれた作品でもあります。やりがいや、もっと深めたいといった欲が生まれるきっかけにもなりましたね。
漠然としか理解できていなかったマイムもピーターから直接教えていただけて。この作品を通して本当に多くのことを学びました。

ほかにもたくさんの出会いはありますが、間違いなく「ジゼル」は自分にとって欠かせない作品のひとつだと思っています。

 
ー今は指導をする側となりましたが、指導する上で意識されていることはありますか?

「ジゼル」は、これまで何度も上演してきており、たくさんの方にゲストとして出演していただいたこともあります。さまざまな方に向けて、ピーターが指導するところを近くで見てきたので、見る目に広がりをもてていることは感じていますね。
ピーターの意図を一番に考えた上で、そこに対していろんなアプローチがあるということを意識しています。
 

 
ー 今回ジゼルとアルブレヒトを演じるのは、2017年の学校向けの公演で主役を演じた経験者2人(渡辺・林田)と初挑戦となる2人(喜入・池田)ですね。

ダンサーとして一段階上がりつつある、軽さ、可憐さを兼ね備えた渡辺恭子。もらったものをそのままじゃなく自分の踊りに変える力がある喜入依里。役の中に入り込んでさまざまな形で出していく、魅せる力を持った林田翔平。エネルギーに溢れた踊りとダイナミックな表現で観客の心をつかむ池田武志。

4名の個性や持ち味を生かしつつ、わっと驚くようなところまで引き出してみたいなと思っています。私自身もとても楽しみにしています。

 
ー 最後に、お客様へのメッセージをお願いします。

「ジゼル」はバレエ団にとっても、私にとっても、特別な作品です。
ただの悲劇ではなく、その奥に込められたストーリーを感じてほしいと思っています。

 


 
ピーター・ライト版「ジゼル」は、日本では唯一当団が上演しており、前回上演した2015年から実に7年ぶりの再演となります。ぜひこの機会をお見逃しなく!皆様のご来場を心よりお待ちしております。

【ジゼル】公演ページ

 

前に戻るBack
戻る