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「MISSING LINK」で衣裳を担当。久保田小百合インタビュー

今やバレエをやっている人なら知らない人はいない大人気のレオタードブランドstina(スティナ)。そのブランドを手掛けているのが、スターダンサーズ・バレエ団ダンサーの久保田小百合だということは、きっと皆さんご存じの通りです。

実は今回、3月公演「MISSING LINK」において、久保田小百合/stinaが衣裳を担当することになりました!

バレエ団では、富山県文化振興財団から依頼を受けて参加した「北前船」という日本舞踊とコラボレーションした舞台や、ジュニアカンパニー公演等ですでに衣裳製作を依頼したことはあるものの、本公演の規模での依頼は初めてとなります。

今回のブログでは、stinaディレクター久保田小百合に、今回の衣裳製作についてインタビューするとともに、CEO、そして母としての顔にも迫りたいと思います。

 

©stina

 


今回の衣裳製作のお話をきいたときの率直なお気持ちをお聞かせください。

バレエ団公演、しかも本公演の衣裳を担当させていただくなんて、身に余るお話で「私でいいんですか?」と驚きました。本当に光栄です。

 

レオタードや、最近はお洋服まで数々のデザインを手掛けていらっしゃいますが、デザインを生み出すインスピレーションはどこから得ているのでしょうか?

レオタードに関しては、各コレクションでミューズを1人立てて、その人をイメージしたコレクションを作っています。最初はセミオーダーからスタートしたので、「なりたいわたしは私が作る」というセルフプロデュースの視点で作っていたのですが、出産を機に、自分というよりは誰かのためにという気持ちが強くなりました。

引き合いに出すのもおこがましいですが、例えばバランシンにミューズがいたように、何かものを作り出すときに「誰かのために」という視点は大切なんじゃないかなと思うんです。
稔先生が作品を作るときも、私の時代だとゆりえちゃんがきっと稔先生のミューズだったのではないかなと思います。

 

バレエ衣裳の製作となると、振付家の意向や、客席から見たときの印象、そして動きやすさ等、考慮しないといけないポイントが変わってくるのではないかと想像します。バレエ衣裳ならではの難しさってあるのでしょうか?

やはりバレエは総合芸術なので、ダンサーの踊り、音楽、照明すべてが合わさって良い作品ができると思っていて、その意味でバランスが大事だなと感じています。
近くで見てよいものができたと思っても、ステージの照明が当たったり、客席から見ると、物足りないということもあるし、逆に近くでみて気になったところが客席から見ると意外と気にならないということも。そういった加減も難しいです。

 

 

 

 

ダンサーとして長年衣裳を着る側だったわけですが、衣裳をデザインする際にはダンサーの視点とデザイナーの視点、どちらが強いのでしょうか?

どちらの視点もあると思うのですが、ディレクター的な目線が一番強いかもしれないですね。トータルで見たときにどうなっているかという点をまず考えて、そこからディテールはこうしよう、こうすれば身体が綺麗に見えるかな、動きやすいかな、という視点が加わってくる感じでしょうか。
そのバランスをとるのが結構難しくて、ダンサーが動きやすい衣裳を作ってあげたいけど、良い生地を使ったりすると重くなってしまうということも・・・。現役時代重い衣裳を着ることもありましたが、今になって作り手側の気持ちがよく分かります(笑)

 

今回の「MISSING LINK」は、再演の「Degi Meta go-go」と新作の2部構成。「Degi」の方も衣裳は新しくなります。衣裳については、具体的な指示はあったのでしょうか?

稔先生から作品のイメージを色々お話しいただいて、そこからデザインに落とし込んでいるという感じです。
「デジ」の方は私も知っている作品ですし、すでにこれまでの衣裳があるので、あまりそのイメージを壊さないようにしながら、stinaらしさを取り込んでいきたいと思っています。稔先生の言葉の中で、特に「冷たい光」というのが私には刺さって、キーワードになっています。音楽からもイメージを膨らませています。stinaのコレクションを作るときも音楽からインスピレーションを得ていることは多いんですよ。

新作の方は、もちろんまだ作品は見たことがないので、キーワードを頼りに作っています。「Human」というのが鍵なのですが、60年代ファッションの要素も取り入れています。

 

60年代ファッションですか!デザインは小百合さんがすべて考えるのですか?

基本的には私が考えるのですが、今回、その60年代というお洋服のエッセンスがはいっているので、普段ものづくりを一緒にやっている仲間にもはいってもらっていて、2人でああでもない、こうでもないと意見を出しながら一緒に進めています。一緒に仕事するといつもいいものが出来上がるので、今回もきっといいものが作れる、と変な自信があります(笑)

 

 

 

出演者が約40人いる今回の公演ですが、全部で何着作るのですか?

全部で約70着、パーツでいうと140くらいあります。
まだファーストサンプルが出来上がる前の段階、というところで、スタートしたばかりです。

 

70着!新作の方は、いくつかのパートで構成されているということで、異なるスタイルの衣裳が見られそうですね。
「デジ」の方は、小百合さんはダンサーとして踊った経験がありますね。どのような印象を持っていますか?

バレエ団内ではよく“稔バレエ”と言いますけど、「デジ」はまさに「ザ・稔バレエ」という感じ。蓜島さんの音楽もかっこよく、ちょっとおもしろスパイスも加わっていながら、フォーサイスの要素も入ったネオクラシック。
私は一度しか踊ったことがないのですが、パートがすごくたくさんあって、覚えるのが大変だった記憶があります。稔先生の作品って、カウントやパートのテレコがすごく多いのですが、デジはそれのオンパレード。例えば、A、B、Cそれぞれの振付があって、ABCの順番で踊る人もいれば、BCA、CABの人もいる。振付はABCの順番で覚えるからABCで踊りたいのに、「BCAね」と言われた時は「あぁ~」って(笑)

稔バレエは全身で踊ると本当にきついんだけど、踊っていてそれがすごく爽快です。そこにたどり着くまでに時間がかかるのですが。疲れるけど、すごく楽しい。踊れるならもう1度踊りたいです。

 

小百合さんはご妊娠・出産を機に現役を退いて、その時は体型の変化もあったのではないかと思うのですが、その後またstinaのモデルとしても現役で。体型キープの秘訣はなんですか?

現役時代は食生活を全く気にしていなくて、運動量がすごいからむしろたくさん食べないともたないという感じだったのですが、そのままの感じで食べていたらすごい太ってしまって。体重が4キロくらい戻らない時期が長かったのですが、パーソナルトレーニングやケトジェニックダイエットを通して一気に戻しました。それからは、レッスンや適度なエクササイズと食生活を意識してキープできるよう心がけています。
自分が塩分で太るタイプなのか、糖分で太るタイプなのかを知り、なぜ太ったりやせたりするのかという構造を理解すると、ダイエットは意外とスムーズにいくんだということを知りました。

 

 

(ケトジェニックダイエットについては久保田小百合のYouTubeチャンネルにて紹介されています。ご興味がある方はぜひこちらもチェック!)

 

 

stinaのディレクターでありながら、4歳のお子さんがいるワーキングママでもある小百合さん。1日のスケジュールってどんな感じなのですか?

朝起きて、子どもをスクールに送って、会社に行って5時くらいまで仕事をし、子どもを迎えに行って帰宅して、平日は基本ワンオペなので寝かしつけまで子どもの面倒をみてという、おもしろくもなんともないですが(笑)本当に普通のワーキングマザーという感じです。

 

仕事もしながら母業もこなし忙しいはずなのに、とてもキラキラ輝いて毎日楽しそうに見えます。その秘訣って何なのでしょう?

基本根が明るいんですよ(笑)それと、楽しいことをしたい、可愛いものを生み出して共有したい、というのがモットーですし、もちろんそのなかで大変なこと、苦労もありますけど、この仕事も自分で始めたことですから。
それと、娘も4歳になり、私のやっている仕事を理解し始めたというのも大きいかもしれません。子どもは自分の鏡だと思って、だからこそ娘に頑張る姿、楽しんでいる姿を見せたいとも思っています。もちろん怒りますけどね(笑)
前に、娘がすごいプリプリしている時期があって、なんでそんなに怒っているの?って考えたら、私もその時よく怒ってしまっていることにふと気づいて。それで私が怒らないようにしたら、娘もすごく穏やかになったんです。

 

「子どもは鏡」、納得です。お子さんの存在も大きなモチベーションになっているのですね。

娘は私を超える陽キャラなんですよ、めちゃくちゃ明るくて(笑)すごいハッピーな性格だから、ポジティブな影響を受けています。もちろん以前と比べたら自分のために使える時間は圧倒的に短くなったのですが、時間が限られているからこそ、仕事はもちろん、子どもと遊ぶ時も全力で楽しむようにしています。ストレス発散にもなるし、子どもの発言から気づかされることも多いんです。

 

 

 

 

仕事と子育てと、良いバランスが保てているのですね。

あとは、会社のスタッフの存在ですね。1人で全部をやっていた時代を考えると、信頼できるスタッフも増えたので、そういう面で気持ちにも余裕が生まれていると思います。それと、彼らに楽しいことを経験させてあげたい、と思っていて。自分だけで見る景色よりも、皆で一緒にそれを共有したいんです。自分のためというより、お客様や誰かのために、ということの方が私は原動力が湧くタイプなのかもしれません。

 

スタッフを思う気持ちに、会社を率いる社長としての素顔も少し覗けたような気がします。
では最後に、今回の公演に向けて、お客様へメッセージをお願いします。

「デジ」はとてもオシャレな作品なので、大人になってバレエを始めた方や、若い方たちにもぜひ見ていただきたいです。「こんなカッコいいバレエもあるんだ」って知ってほしい。
それから1部の方は新作になりますが、「新作」って本当にこの瞬間だけなんですよね。世に出るその瞬間を、ぜひ劇場で見届けてほしいです。

 


チケット好評販売中!
「MISSING LINK」
2023年3月2日(木)、3日(金)
東京芸術劇場プレイハウス
公演詳細はこちらから

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